将棋の戦法を学ぼう(17) 原始棒銀対策【相居飛車編】

2026-02-13更新
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監修
北尾まどか
日本将棋連盟 女流棋士二段 / 株式会社ねこまど 代表取締役
「将棋をもっと楽しく 親しみやすく 世界へ」をテーマに2010年に株式会社ねこまどを設立。将棋教室や将棋イベントを開催している。 こどもや初心者に将棋を教えるための教材としてして開発した「どうぶつしょうぎ」で、園や学校・学童などの教育機関にて普及活動を行っている。

今回は原始棒銀に対する対処法を紹介しましょう。棒銀といえば将棋を覚えて最初に学ぶ基本的な戦法ですが、飛車先の歩も交換せず果敢に攻めてくる戦い方は意外と厄介なもの。初段を目指すためには棒銀対策は欠かせない技術と言って差し支えないでしょう。今回は相掛かり棒銀(引き飛車棒銀)をテーマとします。まずは①9筋の歩を突いて守るパターンから。実戦で後手番になっても大丈夫なように、便宜上先後逆にして解説します。

■①先手9筋歩突き

【初手からの指し手】

     △8四歩    ▲2六歩   △8五歩

▲2五歩 △3二金    ▲7八金   △7二銀

▲3八銀 △8三銀    ▲7六歩    △8四銀

▲9六歩 (第1図)

第1図は▲9六歩

 後手(実際には先手番なので1手早い)は飛車先の歩交換をせずスルスルと銀を繰り出してきました。ここでは▲9六歩と突く手が自然です。8筋の歩を切っていない後手はスムーズに△8五銀と銀を進出することができません。まさに「飛車先の歩交換3つの利あり」ですね。

●MEMO●

飛車先の歩を交換することは①一歩を手持ちにできる、②銀が2五までスムーズに進める、③飛車道が通って後手陣にプレッシャーがかかるという3つの利点がある。

【第1図からの指し手】

        △9四歩    ▲2四歩    △同 歩

▲同 飛 △2三歩    ▲2六飛   △9五歩    (第2図)

第2図は△9五歩まで

 先手は落ち着いて飛車先の歩を交換。対して攻めを急ぎたい後手は△9五歩と仕掛けてきました。相居飛車の棒銀では頻出の仕掛けで、以下▲同歩の一手に△同香の変化もあるので後述します。

【第2図からの指し手①】

▲9五同歩 △同 銀    ▲同 香    △同 香

▲9六歩  △同 香    ▲9七歩 △2四香(第3図)

第3図は△2四香まで

 △9五歩▲同歩に対して△同銀と銀で行くのが棒銀の常識。銀香交換の駒損ながら、9筋の香をさばきながら持ち駒に香を加えて攻め続ける狙いです。対して▲9六歩~▲9七歩と先手を取って香を捕獲するのは駒得を目指す対応。代えては冷静に▲9七歩(参考図)と収めておくのもあり、これなら続く△2四香に▲2五歩と打つ一歩を温存しておけます。

参考図は▲9七歩まで

 △2四香と打たれた第3図は困ったようですが…。

【第3図からの指し手】

      ▲5六飛 △4二銀    ▲7五歩   

 △2八香成 ▲9六飛 (第4図)

第4図は9六飛まで

 5三の地点の守りが薄いのに注目して▲5六飛と回るのが読み筋で、先手は手番を握ることができます。しばらく進んだ第4図は先手優勢で、このあと△3八成香と銀を取られても▲同金としておけば駒割りは香得、このあと▲2六香~▲2五香打のような単純な攻めが受けづらく、後手の原始棒銀を完全に逆用した格好です。

【第2図からの指し手②】

△9五歩    ▲同 歩

△同 香    ▲9六歩    △8六歩    ▲同 歩

△8五歩    ▲同 歩    △同 銀    ▲9五歩

△8六歩    ▲6六角 (第5図)

第5図は▲6六角まで

 △9五歩▲同歩に対して△同香と取るのは一歩を入手し合わせ歩で攻める狙い。素直に▲同香では△同銀(参考図)で後手の攻めを調子づかせてしまいます。基本的に攻めの香と守りの香が交換になった場合は、攻めの香をさばいた方が満足というのも将棋のセオリーのひとつなので積極的に反発していきたいところ。

参考図は△9五同銀まで

 正しい応手は▲9六歩と香得を目指す手で、これに△同香▲同香△9五歩とくればひと足お先に▲2五香(参考図)と打って先手優勢。こうなると後手は△2四香と打つ一手が完全に間に合っていません。

参考図は▲2五香まで

 以上より、原始棒銀は▲9六歩を突いておけば対処できるということがわかりました。後手はいったん△8六歩▲同歩△同飛と飛車先の歩を交換する手順を選ぶのが相場になりますが、今回は9筋の歩を突かずに原始棒銀を撃退する手順も紹介しましょう。

■②先手9筋突かず

【初手からの指し手】

△8四歩    ▲2六歩   △8五歩 ▲2五歩  

△3二金    ▲7八金   △7二銀 ▲3八銀  

△8三銀    ▲7六歩    △8四銀 ▲2四歩  

△同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲2六飛  

△9五銀 (第6図)

 

第6図は△9五銀まで

 首尾よく9筋に銀を出られてしまいましたが、大丈夫でしょうか。8六の地点に数を足すのであれば▲7七角のような手が見えますが、これには△8六歩▲同歩△同銀(参考図)で数が足りていません。

参考図は△8六同銀まで

 8六の地点に対しては現状▲歩△飛銀歩で1対3と負けているので、いまさら1枚足して2対3にするのは非効率なのですね。▲7七角の一手を指したことにより自分の攻めが1手遅れていることも忘れてはいけません。「受からないときは受けない」が将棋の鉄則で、別の場所で戦いを起こすことで相手の攻めに空を切らせるというのが大切な考え方。この考え方は振り飛車のさばきとも通ずるものがありますね。

【第6図からの指し手】

     ▲9六歩    △8六歩    ▲同 歩 

△同 銀    ▲6六角    △8七銀成  (第7図)

 

第7図は△8七銀成まで

 ▲9六歩と突いて後手の銀を呼びこむのは高度な手筋。代えては▲5八玉や▲3六歩という着実なプラスを積み重ねる手も正解です。△8七銀成とされた第7図は失敗のようですがもちろん読み筋。▲同金と取るのは一番まずく、△同飛成▲7八銀△8五龍(参考図)となってにっちもさっちもいかなくなります。

参考図は△8五龍まで

【第7図からの指し手】

     ▲8三歩  

△同 飛    ▲8四歩   △7八成銀  ▲同 銀  

△8二飛    ▲2五飛 (第8図)

第8図は▲2五飛まで

 ▲8三歩~▲8四歩の連打の歩が当然とはいえ好手。△8二飛と逃げれば▲8七金(参考図)で先手は銀をマル得することができます。

参考図は▲8七金まで

 飛車取りを手抜いて△7八成銀と取り合うのはやむを得ないところですが、これには▲8三歩成(参考図)と飛車の方を取るのも有力。参考図からは次に▲8七飛(▲8二飛には△7一金で飛車が詰む)として次の▲7二と△同金▲8一飛成を狙えば自然と優勢です。細かいところですが手順中、先手玉が6八にいる場合は△7八成銀が王手となって手抜けないので▲同銀と応じるよりなくなるところです。

参考図は▲8三歩成まで

 ▲6六角と軽く身をかわしたあと、第8図の▲2五飛は地味ながら大切な決め手。次の▲8五飛が飛車先逆襲の厳しい狙いとなってこれが受けづらいのです。△7四金と打つのでは何をやっているかわからないですし、かといって▲8五飛△7二金には▲8三銀の打ち込みが厳しく残ります。

■まとめ

・居玉で飛車先の歩交換も省略する一直線棒銀を原始棒銀と呼ぶ

・原始棒銀に対しては▲9六歩と突いても突かなくても大丈夫

・▲9六歩と突いたら銀香交換の駒得を主張

・突かないパターンでは8筋を受け流すさばきの感覚が重要

・いずれも飛車の横利きがポイントとなる

■参考棋譜

パターン1

△8四歩    ▲2六歩    △8五歩    ▲2五歩

△3二金    ▲7八金    △7二銀    ▲3八銀

△8三銀    ▲7六歩    △8四銀    ▲9六歩

△9四歩    ▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛

△2三歩    ▲2六飛    △9五歩    ▲同 歩

△同 銀    ▲同 香    △同 香    ▲9六歩

△同 香    ▲9七歩    △2四香    ▲5六飛

△4二銀    ▲7五歩    △2八香成  ▲9六飛

 

パターン2

△8四歩    ▲2六歩    △8五歩    ▲2五歩

△3二金    ▲7八金    △7二銀    ▲3八銀

△8三銀    ▲7六歩    △8四銀    ▲2四歩

△同 歩    ▲同 飛    △2三歩    ▲2六飛

△9五銀    ▲9六歩    △8六歩    ▲同 歩

△同 銀    ▲6六角    △8七銀成  ▲8三歩

△同 飛    ▲8四歩    △7八成銀  ▲同 銀

△8二飛    ▲2五飛

執筆者 

水留啓(みずとめ けい) 将棋ライター・将棋講師(アマチュア四段)

日本将棋連盟コラム(2019年)、将棋情報局ヤフーニュース(2022年~)を担当。

ねこまど将棋教室にて子供から大人、初心者から有段者まで幅広く指導を継続(2017年~)するほか、専門書の執筆などにも活躍。「プロの実戦に学ぶ美濃囲いの理論」「『次の一手』で覚える実戦手筋432」(構成担当)ほか。

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