振り飛車党の頭の中7

2026-06-22更新
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監修
北尾まどか
日本将棋連盟 女流棋士二段 / 株式会社ねこまど 代表取締役
「将棋をもっと楽しく 親しみやすく 世界へ」をテーマに2010年に株式会社ねこまどを設立。将棋教室や将棋イベントを開催している。 こどもや初心者に将棋を教えるための教材としてして開発した「どうぶつしょうぎ」で、園や学校・学童などの教育機関にて普及活動を行っている。

金銀の厚みを生かす振り飛車

今回は四間飛車対居飛車穴熊の戦いを例に、振り飛車側がじっくり丁寧に抑え込む展開について見ていきましょう。

テーマ図

 いま居飛車側が△2四角とのぞいて次の△4五歩の筋を見せてきた局面。先手の木村美濃は堅さでこそ穴熊に劣りますが、金銀の連携がよく右辺での戦いに適した形。反面、自陣に飛車を打ち込まれる展開になると途端に弱みを見せてしまうので飛車交換のようなさばき合いは避けるべき展開です。

【テーマ図からの指し手】

▲3七桂 △4二銀 ▲5七銀 △5三銀

▲4五歩 (第1図)

 第1図

 △4二銀を見て▲5七銀と引いたのは次の▲6四歩を見せて好タイミング。▲5七銀はいま指さないと△3一銀右▲5七銀△4二角(参考図)と四枚穴熊の堅陣に組まれてしまうので絶対の一手でした。


参考図

 参考図のように金銀4枚が連結した居飛車穴熊は手の付けられない堅さなので、振り飛車側は無条件に許してはいけないというのが現代振り飛車党の至上命題となっています。

 第1図、機は熟したと見て▲4五歩と突いたのが軽い一手でした。△同歩には▲同桂△4四銀▲6四歩△同歩▲同飛(参考図)と進め、難しいながら実戦的に指し手のわかりやすい振り飛車ペースと見ます。

参考図

【第1図からの指し手】

     △4二飛 ▲4四歩 △同 金

▲4五歩 △同 金 (第2図)

第2図

 △4二飛と回ったのが居飛車最強の受け。位を取った▲4五歩にも強く△同金と取って4筋からの勢力奪回を目指しています。思わぬ反撃にあった形の振り飛車側ですが、ここからの数手は絶対手に近いのでぜひ考えてみてください。

【第2図からの指し手】

▲4五同桂 △同 飛 ▲3五歩(第3図)

第3図

 金を取るのは当然として、▲3五歩の焦点の突き出したこの一手の受け(攻め)。放っておくと△4六歩▲同銀左△同飛▲同銀△同角のような二枚換えの筋があったためこれを防ぎつつ反撃に乗り出します。

 第3図の▲3五歩に対して①△同飛だと▲3六金で飛車が捕獲できますし、②△同歩だと▲3四金△5一角▲4六銀左(参考図)と盛り上がって4筋の勢力奪回に成功。歩切れとはいえこのあと▲3五金と引く味がよく先手成功です。

参考図

【第3図からの指し手】

     △3五同角 ▲3六金 △4二飛

▲3五金 △同 歩  ▲7一角 △3六桂(第4図)


第4図

 首尾よく角を奪って振り飛車好調の展開が続きます。▲7一角に対しては△5二金(参考図)という渋い受けが有力なのですが、人間的には指しづらいでしょう。


参考図

 △3六桂の王手は一発逆転を目指した勝負手。自玉そばの攻防ということもあり、この手への対応を誤ると一気に怪しくなります。

【第4図からの指し手】

▲3九玉 △6二銀 ▲8二角成 △3三桂

▲9一馬 △7三桂 ▲3四香(第5図)

第5図

 桂を残して怖いようでも▲3九玉と引くのが最善。持ち駒に金しかない後手はこれで攻めが続きません。△3六桂に▲同歩と取るのは△同歩▲5三角成△4九飛成(参考図)と勝負され一気に形勢不明に。

参考図

 参考図で先手は駒得とはいえ大駒が働きのない駒になっており、また自玉も△2九金や△3七銀の筋を同時に受けることができず守勢に回らざるを得ません。対穴熊では一直線の斬り合いを避けるのがコツ。丁寧な指し回しでリードを拡大する意識で指すのがよいでしょう。

 ▲3四香は金取りを見せて△4五桂の跳ね出しを牽制した意味合い。

【第5図からの指し手】

     △4三金 ▲3三香成 △同 金

▲4六桂 △4四金(第6図)

第6図

 攻め合いに持ち込めなかった後手は自陣の金を攻めに使ってきますが、こうなると穴熊の堅さはだいぶ薄まった印象。△4三金の瞬間に▲3三香成と桂を取ったのもうまく、△4三金の一手をムダ手にすることで攻めの手番を得ることができました。

 第6図、ここで先手は満を持して反撃に乗り出します。

【第6図からの指し手】

▲7七馬  △同 銀 ▲3四桂打 △4一飛

▲2二桂成 △同 玉(第7図)

第7図

 質駒の桂を取って金銀両取りをかけるのが用意の攻め。大切な馬で遊び駒の桂を取るのは味が悪いようでも▲3四桂が後手玉を攻める急所なので十分つり合いは取れています。

 銀を取った第7図はすでに先手優勢。次の決め手を見つけていただきましょう。

 

【第7図からの指し手】

▲4二銀 △同 飛 ▲3四桂(第8図)

結果図

 タダのところに放り込む▲4二銀が決まります。△同飛には▲3四桂の王手飛車取り、また飛車をかわすのも▲4四角と金を取って先手勝勢は揺るぎません。

 結果図から△1三玉と逃げても悠々▲4二桂成と飛車取り、これが4四の金取りに。持ち駒が豊富な後手からは△3七桂のような詰めろが気になりますが、根元の桂を▲3六銀と外してしまえば△同歩▲4四角(詰めろ)で大丈夫。こうなると先手の木村美濃は広さがあり、3八金の構えが即詰みになりづらいという強みを最大限に生かせている格好です。

 居飛車穴熊に対する木村美濃はさばき合いの展開になるとすこし苦しいのですが、本譜のような金銀による勢力争いになると強みを発揮します。角のラインを生かした玉頭戦を試していただければと思います。

執筆者 

水留啓(みずとめ けい) 将棋ライター・将棋講師(アマチュア四段)

日本将棋連盟コラム(2019年)、将棋情報局ヤフーニュース(2022年~)を担当。

ねこまど将棋教室にて子供から大人、初心者から有段者まで幅広く指導を継続(2017年~)するほか、専門書の執筆などにも活躍。「プロの実戦に学ぶ美濃囲いの理論」「『次の一手』で覚える実戦手筋432」(構成担当)ほか。

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