将棋の戦法を学ぼう(22)先手中飛車 (後編)

2026-04-24更新
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監修
北尾まどか
日本将棋連盟 女流棋士二段 / 株式会社ねこまど 代表取締役
「将棋をもっと楽しく 親しみやすく 世界へ」をテーマに2010年に株式会社ねこまどを設立。将棋教室や将棋イベントを開催している。 こどもや初心者に将棋を教えるための教材としてして開発した「どうぶつしょうぎ」で、園や学校・学童などの教育機関にて普及活動を行っている。

前回に引き続き先手中飛車の戦いについて見ていきましょう。

■流行の後手超速

 今回は居飛車側が後手超速と呼ばれる急戦形にしてくるパターンを解説していきます。超速▲3七銀戦法は後手のゴキゲン中飛車に対して用いられる対策として開発されましたが(参考図)、やがて後手番で先手中飛車に対して使うのも有力と分かってきて居飛車側の主力戦法となっています。

参考図は▲4五桂まで

 いずれの場合も超速側は中飛車の5筋の歩をかすめ取る手が主な狙い筋です(一例として参考図以下△4二角▲5五銀左)。

【初手からの指し手】

▲5六歩    △8四歩    ▲7六歩    △8五歩

▲7七角    △6二銀    ▲5五歩    △4二玉

▲5八飛    △7四歩 (第1図)   

第1図は△7四歩まで

 後手超速は先手超速と比べると当然1手遅れているわけですが、△3四歩を後回しにするのが序盤のポイント。角交換になる大さばきの展開を避けつつ先手の角頭を攻める展開を含みにしています。

 これに対し銀対抗と呼ばれる形で受けるなら次の一手は必須です。

【第1図からの指し手】

▲6八銀    △7三銀  ▲5七銀    △6四銀   

▲6六銀    (第2図)

 

第2図は▲6六銀まで

 居飛車の△6二銀に▲6八銀、△7三銀に▲5七銀といった要領で相手の右銀と自分の右銀の高さ(段)を合わせるのがコツ。これで△6四銀vs▲6六銀の銀対抗を完成させることができました。

 理想を言えば▲6六銀の代わりに▲5六銀として▲4五銀の余地を残したい気持ちはあるのですが、それにはいつでも△7五歩▲同歩△同銀(参考図)と開戦されてやや自信なし。続いて▲4五銀には△7六銀~△6七銀成があり、中飛車側は居玉がたたりそうな展開ですね。

 参考図は△7五同銀まで

【第2図からの指し手】

     △3二玉 ▲4八玉    △7三桂   

▲3八玉    △3四歩 ▲2八玉    △4二銀   

▲3八銀    △1四歩 ▲1六歩    △3三銀   

▲4六歩    △4四銀 (第3図)

第3図は△4四銀まで

 超急戦は回避されて駒組みに入ります。居飛車側は▲6六銀型に組ませたことに満足して角道を開けてきました。中飛車側は▲4六歩と突いているのがポイントで、戦いが起こったときに▲4五銀で銀を攻めつつ角交換を迫るような手が可能になっています。

 第3図から▲7八金とするのは一策。以下△5二金右▲5九飛△6五桂(参考図)といった展開が予想され一局ですが、こうなると先攻されて先手番らしさはなくなっている印象です。

参考図は△6五桂まで

【第3図からの指し手】

▲5四歩    △同 歩    ▲同 飛    △5五歩(第4図)

第4図は△5五歩まで

 積極的に5筋の歩を交換しにいくのがこの戦法の主眼。最後の△5五歩に代えて、仮に△5三歩と打ってくれれば▲5九飛(参考図)と引いておいて大満足です。

参考図は▲5九飛まで

 参考図は何気ない局面に思えるかもしれませんが、後手からの△6五桂~△5五銀左というような歩をかすめ取る筋がなくなっているのが大きい。歩を守る必要がなくなったことで、場合によっては▲5八金左~▲4七金のような大胆な活用も視野に入ってきます。評価値的にはまだまだこれからの将棋ですが、人間が作った定跡が「狙い筋をもって駒組みをする」というプロセスを踏んでいる以上、参考図は先手作戦勝ちといって差し支えないでしょう。

 後手としても本譜の△5五歩などと反発するのは行きがかり上やむを得ない手ということになります(△5五歩が無理であれば△9四歩などを考える)。

【第4図からの指し手】

▲7五歩    (第5図)

第5図は7五歩まで

 飛車が捕獲され困ったようですが、焦点の歩を突き出して手を作っていきます。以下①△同歩には▲7四歩、②△同銀には▲7四飛でいずれも先手満足となるため本譜の③△8四飛は仕方ない対応ですが…。

【第5図からの指し手】

     △8四飛    ▲9五角    △9四飛

▲6四飛    △同 歩    ▲7三角成 (第6図)

第6図は▲7三角成

 ▲9五角と飛び出して後手の飛車を脅かすのが「幽霊角」と呼ばれる手筋。△8二飛と引くのは▲7四歩と取り込んで飛車浮きが無駄な手になってしまいます。

 △9四飛に対する▲6四飛も継続の好手。このあたりは綱渡りの攻めですが、「切れそうで切れない」攻めを実現していくのが先手中飛車(ゴキゲン中飛車)を指していく上での重要な心構え。居飛車党の「手厚く抑え込む」方針とは対極にある軽いさばき(カルサバ)の味を楽しんでいただければと思います。

 馬を作った第6図で形勢判断をしてみます。①駒の損得は▲銀桂△飛で互角、②玉の堅さも大きな差はないのですが、③駒の働きで先手は大きなリードを持っています。そのことは先手の馬と後手の飛車を比べてみれば一目瞭然ですね。細かいところですが、先手の6九金が居飛車側からの飛車の打ち込みを防いでいるのも地味ながらポイントで、△8八飛に▲7八銀(参考図)と打って飛車を逮捕する手が用意されています。

 参考図からは次に▲7七銀引とすれば飛車が捕獲できる形。水面下の頻出手筋なのでぜひご記憶ください。

 

参考図は▲7八銀まで

【第6図】

     △5六歩  ▲9六歩    △6五歩   

▲同 銀    △5七歩成 ▲9五歩    △5三銀   

▲9四歩    △9九角成 ▲8二飛  △5二金右 

▲5四歩    △4二銀 ▲5三銀 (結果図)

結果図は▲5三銀まで

 以下は一例となりますが、勝ち方のお手本を紹介します。後手から有効な指し手がないのを見越してじっと▲9六歩と突くのが決め手。5筋にと金を作ったのは居飛車側のせめてもの抵抗ですが、奪った飛車を王手で打ち込めば後手玉攻略が見えてきます。

 結果図から△4七香のような攻め合いには▲5二銀不成が確実な攻め。拠点の歩に(銀などの)駒をに打ち込む「おかわりの攻め」が実現するときはたいてい優勢なときです。

■まとめ

 今回は先手中飛車に対して居飛車側が後手超速に組んでくる展開を見てきました。この戦型は中飛車側が安全に5筋の歩を交換できるかが地味ながら焦点になっており、現時点の結論としては「歩交換できる」ということになっているようです。

 後手としては△5五歩と打って飛車の捕獲を目指したのがやや無理筋。専門的には代えて△9四歩(参考図)のように自陣のスキを消して第二次駒組みに入るのが本筋とされています。

 いずれにしても、敵陣の細かなスキを突いて細い攻めをつなぐ感覚を味わっていただければと思います。

■参考棋譜

▲5六歩    △8四歩    ▲7六歩    △8五歩

▲7七角    △6二銀    ▲5五歩    △4二玉

▲5八飛    △7四歩    ▲6八銀    △7三銀

▲5七銀    △6四銀    ▲6六銀    △3二玉

▲4八玉    △7三桂    ▲3八玉    △3四歩

▲2八玉    △4二銀    ▲3八銀    △1四歩

▲1六歩    △3三銀    ▲4六歩    △4四銀

▲5四歩    △同 歩    ▲同 飛    △5五歩

▲7五歩    △8四飛    ▲9五角    △9四飛

▲6四飛    △同 歩    ▲7三角成  △5六歩

▲9六歩    △6五歩   ▲同 銀   △5七歩成

▲9五歩    △5三銀  ▲9四歩    △9九角成

▲8二飛    △5二金右  ▲5四歩    △4二銀

▲5三銀

執筆者 

水留啓(みずとめ けい) 将棋ライター・将棋講師(アマチュア四段)

日本将棋連盟コラム(2019年)、将棋情報局ヤフーニュース(2022年~)を担当。

ねこまど将棋教室にて子供から大人、初心者から有段者まで幅広く指導を継続(2017年~)するほか、専門書の執筆などにも活躍。「プロの実戦に学ぶ美濃囲いの理論」「『次の一手』で覚える実戦手筋432」(構成担当)ほか。

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