将棋の戦法を学ぼう(21)先手中飛車

2026-04-15更新
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監修
北尾まどか
日本将棋連盟 女流棋士二段 / 株式会社ねこまど 代表取締役
「将棋をもっと楽しく 親しみやすく 世界へ」をテーマに2010年に株式会社ねこまどを設立。将棋教室や将棋イベントを開催している。 こどもや初心者に将棋を教えるための教材としてして開発した「どうぶつしょうぎ」で、園や学校・学童などの教育機関にて普及活動を行っている。

今回から2回にわたって先手中飛車の戦いについて見ていきます。先手中飛車は角道を止めないという点でゴキゲン中飛車と似ている作戦です。文脈によっては同じ意味で用いられることもありますが、後手番で用いられるゴキゲン中飛車とは違って先手中飛車はその名の通り「先手番で用いられる角道を止めない中飛車」というのが定義になります。

【初手からの指し手】

▲5六歩    △8四歩    ▲7六歩    △8五歩

▲7七角    △5四歩    ▲5八飛    △6二銀(第1図)

第1図は△6二銀まで

 初手に▲5六歩と突いて中飛車宣言。△8五歩に対しては角頭を受ける必要がありますが、おたがいの角がぶつかり合っていない状態では▲7七角と上がるのが基本でした。

 △5四歩と位を保たれた(位を取らせてこなかった)第1図は▲5五歩と突っかけていく手も有力ですが、以下△同歩▲同飛△4二玉(参考図)となって先手有利になるわけではありません。形勢は互角ですが、このあと△3四歩と角で飛車を追われる展開はあまり指しやすいものではないので初めて指す方は▲5五歩と突く前に玉を囲う展開をおすすめします。

参考図は△4二玉まで

【第1図からの指し手】

▲6八銀    △4二玉    ▲4八玉    △3四歩

▲3八玉    △5三銀    ▲2八玉    △7七角成

▲同 銀   △6四銀 (第2図)

第2図は△6四銀まで

 角交換が行われて一段落。居飛車は△6四銀と上がったのが工夫で、先手からの▲5五歩を防いでいます。この定跡では先手からの▲5五歩の仕掛けが焦点になるので、この後も注目してください。

 角交換型の振り飛車では左金は▲7八金と左に上がるのが基本ですが、場合によっては▲8八飛と向かい飛車に振り直すこともあるのでギリギリまで保留しておきたいところです。

【第2図からの指し手】

▲3八銀    △3二玉 ▲1六歩    △1四歩   

▲7八金    △4二銀 ▲5九飛    △4四歩   

▲6六銀 △4三銀 ▲7七桂   △5二金右  (第3図)


 先に述べた通り第2図からは▲8八飛(参考図)の進行も有力で、以下は△7四歩に▲6六銀と上がるイメージ。向かい飛車に組むと▲8六歩△同歩▲同銀の逆棒銀を狙いたくなりますが、それには△7三桂と桂で対抗されて手も足も出なくなります。

参考図は▲8八飛まで

 さて本譜は▲7八金と上がったことで▲6六銀と上がりやすくなりました。次は▲5五歩△同歩▲5四角の馬作りの狙いがあるので後手は△4三銀とコビンを守る手が欠かせませんね。

【第3図からの指し手】

▲7七桂    △5二金右  ▲5五歩    △同 歩

▲同 銀    (第4図)



第4図は▲5五同銀まで

 5筋で歩がぶつかって本格的な戦いが始まりますが、この仕掛けは中飛車界隈で長らく禁忌とされてきました(代えては▲7五銀の銀ぶつけなどが代替案)。ここで△5五同銀と銀交換に応じてもらえれば▲同飛△5四歩▲8五飛(参考図)と飛車をさばいて先手ペース。

参考図は▲8五歩まで

 もちろんこう進めばうまいのですが、▲5五同銀の瞬間に△5八歩の切り返しが鋭い手筋。▲同飛の一手に△6九角▲6八飛△7八角成▲同飛△5五銀(参考図)と進んだ形は▲角と△金銀の二枚換えで、次に△8六歩からの8筋突破が見えていることもあり後手有利になるというのが長年の結論でした。しかし、AI時代に入ってこの常識が覆ります。


参考図は△5五銀まで

【第4図からの指し手】

     △5八歩    ▲同 飛    △6九角

▲6四銀    △5八角成  ▲同 金    △6四歩(第5図)


第5図は△6四歩まで

 飛車取りを手抜いて角飛車交換を甘受するのが新感覚。△6四歩と手を戻された第5図は先手陣が乱れており、また手にした角の使い道も難しく先手不利と思われる方が多いのではないでしょうか。

 しかしここで継続の妙手があります。すこし考えてみてください。

【第5図からの指し手】

▲7一角    △7二飛    ▲4四角成  △同 銀

▲5四角 (第6図)

 

第6図は5四角まで

 狭いところに▲7一角と打ち込むのが正解で、第6図まで進むと王手飛車取りの狙いが明らかになりました。飛車を取り返せば▲8二飛と打ち込んでの攻めが見えてきます。

 なお手順中の▲7一角に対して△9二飛とこちらに逃げるのは有力で、以下▲8三銀△6二飛▲同角成△同金に▲8二飛と攻めて一局の将棋。また、▲4四角成のタダ捨てに対し、馬を取らずに△3三銀と抵抗するのは▲6六馬で先手良しです。

【第6図からの指し手】

     △4三銀    ▲7二角成  △6九飛

▲5九飛    △同飛成    ▲同 金    △8九飛

▲7九飛    △同飛成    ▲同 金    △5七角

▲6九金左  △8九飛    ▲5八歩    △2四角成

▲8二飛 (結果図)



結果図は▲8二飛まで

 自陣に飛車を打ち込まれる展開は金が浮いている美濃においては嫌な展開ですが、次々に自陣飛車を打てば金を一段金の好形に戻すことができます。後手が歩切れなのも大きく、△5七歩のように再度金頭を叩く手がないのも見逃せません。

 角を追い返して▲8二飛と打ち込んだ結果図は先手優勢。先手だけが桂香の2枚ともとることができ、桂を取れば▲3六桂の両取り、香を取れば▲5七香の攻めなど手段に困りません。

 以上見てきたように、先手中飛車側から積極的に銀交換を求める展開は手筋の△5八歩で不可能と思われていたのを最新の研究によって掘り起こされた格好。古くて新しい積極的な指し回しをぜひ実戦で使ってみてください。

■まとめ

・先手中飛車は先手番で使うゴキゲン中飛車

・角交換した後は左金は7八に上がる

・▲5五歩の銀交換は成立することが判明

・手にした二枚角を生かして王手飛車取りをかけよう

・自陣飛車を使って美濃を一段金型に修復する

【参考棋譜】

▲5六歩    △8四歩    ▲7六歩    △8五歩

▲7七角    △5四歩    ▲5八飛    △6二銀

▲6八銀    △4二玉    ▲4八玉    △3四歩

▲3八玉    △5三銀    ▲2八玉    △7七角成

▲同 銀    △6四銀    ▲3八銀    △3二玉

▲1六歩    △1四歩    ▲7八金    △4二銀

▲5九飛    △4四歩    ▲6六銀    △4三銀

▲7七桂    △5二金右  ▲5五歩    △同 歩

▲同 銀    △5八歩    ▲同 飛    △6九角

▲6四銀    △5八角成  ▲同 金    △6四歩

▲7一角    △7二飛    ▲4四角成  △同 銀

▲5四角    △4三銀    ▲7二角成  △6九飛

▲5九飛    △同飛成    ▲同 金    △8九飛

▲7九飛    △同飛成    ▲同 金    △5七角

▲6九金左  △8九飛    ▲5八歩    △2四角成

▲8二飛

執筆者 

水留啓(みずとめ けい) 将棋ライター・将棋講師(アマチュア四段)

日本将棋連盟コラム(2019年)、将棋情報局ヤフーニュース(2022年~)を担当。

ねこまど将棋教室にて子供から大人、初心者から有段者まで幅広く指導を継続(2017年~)するほか、専門書の執筆などにも活躍。「プロの実戦に学ぶ美濃囲いの理論」「『次の一手』で覚える実戦手筋432」(構成担当)ほか。

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